2026年からの適用が迫る「新リース会計基準」。IFRS第16号に準拠するこの大きな変更に対し、多くの経理・財務担当者や経営者の方が対応に不安を抱えているのではないでしょうか。本記事を読めば、新リース会計基準の基本から、会社に与える5つの具体的な影響、そして今すぐ始めるべき4つの対策ステップまで、その全貌を理解できます。結論として、新基準の最大のポイントは「原則すべてのリース契約が資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上される」点にあり、これにより自己資本比率などの経営指標が悪化する可能性があります。この記事は、財務諸表へのインパクトや業務の煩雑化といった課題を乗り越え、スムーズな移行を実現するための実践的なロードマップを提供します。
新リース会計基準とは 2026年からの適用に向けた基本知識
2023年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から公開草案が公表された「新リース会計基準」。これは、企業の財務報告に大きな影響を与える可能性のある重要な会計基準の変更です。特に、これまで費用処理が可能だった多くのリース契約が資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上されることになるため、経理担当者だけでなく、経営層もその内容を正しく理解し、早期に準備を進める必要があります。この章では、2026年からの適用に向けて、まずは新リース会計基準の基本的な知識をわかりやすく解説します。
そもそもリース会計基準とは何か
リース会計基準とは、企業がコピー機やPC、社用車、不動産(オフィスや店舗)などを「リース」という形態で利用する際の会計処理や開示に関するルールのことです。リース取引は、設備投資の初期費用を抑えつつ必要な資産を利用できるため、多くの企業で活用されています。
現行の会計基準では、リース取引は主に以下の2種類に分類されてきました。
- ファイナンス・リース取引: リース期間中に契約を解約できず(ノンキャンセラブル)、リース料総額が資産の購入代金と諸経費の合計額とほぼ等しい(フルペイアウト)取引。実質的には資産を購入したのと同じ経済的実態を持つため、資産と負債を貸借対照表に計上(オンバランス)します。
- オペレーティング・リース取引: ファイナンス・リース取引以外のリース取引。単なる資産の賃貸借と見なされ、支払ったリース料を費用として損益計算書に計上するのみで、貸借対照表には計上されません(オフバランス)。
このように、現行基準ではリースの種類によって会計処理が異なり、特にオペレーティング・リースは貸借対照表に現れない「簿外債務」となる点が大きな特徴でした。
新リース会計基準が導入される背景 IFRS第16号との関連性
では、なぜ今、リース会計基準が変更されるのでしょうか。その最大の理由は、国際的な会計基準との整合性(コンバージェンス)を図るためです。
近年、グローバルに事業を展開する企業が増え、各国の会計基準が異なると、投資家が企業の財務状況を正確に比較・分析することが困難になります。この問題を解決するため、日本の会計基準を国際会計基準(IFRS)や米国会計基準に近づける動きが進んでいます。
リース会計の分野では、IFRSでは「IFRS第16号」、米国会計基準では「ASC 842」がすでに導入されており、原則としてすべてのリースを資産・負債として計上(オンバランス)する「単一モデル」が採用されています。
従来の日本の基準では、オペレーティング・リースがオフバランス処理されるため、多額のリース契約を抱える企業であっても、その実態が貸借対照表から読み取りにくいという課題がありました。これは「オフバランス問題」と呼ばれ、投資家が企業の隠れた債務リスクを把握しづらい原因とされていました。
今回の新リース会計基準の導入は、この「オフバランス問題」を解消し、財務諸表の透明性と企業間の比較可能性を高めることを主な目的としています。
いつから適用?対象となる企業とスケジュール
新リース会計基準の適用時期と対象企業は、すべての企業にとって最も気になるところでしょう。現時点での公開草案に基づいた情報を整理します。
適用時期
原則として、2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から強制適用されます。(3月決算の会社であれば、2027年3月期から)
ただし、準備が整った企業は、2024年4月1日以後開始する事業年度の期首からの早期適用も認められる見込みです。
対象となる企業
新リース会計基準が強制適用されるのは、主に以下の企業です。
- 金融商品取引法の適用を受ける上場企業およびその連結子会社
- 会社法上の「大会社」(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社)
上記に該当しない非上場の 中小企業については、当面の間、現行のリース会計基準を継続して適用することが認められる見通しです。ただし、将来的な適用拡大の可能性も視野に入れ、動向を注視しておくことが望ましいでしょう。
これまでの経緯と今後のスケジュール(見込み)
新リース会計基準の導入に向けたスケジュールは以下の通りです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年5月2日 | 企業会計基準委員会(ASBJ)が公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等を公表 |
| 2023年8月4日 | 公開草案へのコメント募集を締め切り |
| 2024年後半~2025年前半(予定) | 寄せられたコメントを審議の上、最終的な会計基準を公表予定 |
| 2024年4月1日 | 早期適用の開始日(以後開始する事業年度の期首から) |
| 2026年4月1日 | 強制適用の開始日(以後開始する事業年度の期首から) |
最終的な会計基準の公表はこれからですが、強制適用まで残された時間は決して長くありません。対象となる企業は、今から情報収集と準備を開始することが極めて重要です。
従来基準との違いは?新リース会計基準の変更点をわかりやすく解説
2026年4月以降に開始する事業年度から強制適用が予定されている新リース会計基準。では、具体的に何がどう変わるのでしょうか。特に、これまで多くの企業が採用してきたオペレーティング・リース取引の扱いに大きな変更が生じます。この章では、新旧の基準を比較しながら、変更点の核心をわかりやすく解説します。
すべてのリースがオンバランス化される原則
新リース会計基準における最大の変更点は、原則としてすべてのリース契約が資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上される「オンバランス化」です。
従来の会計基準では、リース取引は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類されていました。このうち、契約内容が売買取引に近いファイナンス・リースは資産・負債として計上(オンバランス)されていましたが、一般的な賃貸借取引に近いオペレーティング・リースは、支払ったリース料を費用として計上するだけで、B/Sには計上されませんでした(オフバランス)。
しかし、オフバランスのオペレーティング・リースであっても、企業は将来にわたってリース料を支払う義務を負っており、実質的には負債と同じ経済的実態を持っています。このような状況が財務諸表の利用者にとって企業間の比較可能性を損なう要因であると指摘されていました。そこで、国際的な会計基準(IFRS第16号)との整合性を図る観点からも、この区分を撤廃し、原則としてすべてのリースをB/Sに計上する方針へと変更されることになったのです。
会計処理の具体的な変更点
「すべてのリースがオンバランス化される」という原則は、借手と貸手の会計処理にそれぞれ異なる影響を与えます。特に大きな影響を受けるのは、リース物件を利用する「借手」側です。
借手の会計処理
借手側では、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースについても、新たに資産と負債を計上する必要が生じます。具体的には、リース期間にわたってリース物件を使用する権利を「使用権資産」、将来支払うリース料総額の現在価値を「リース負債」としてB/Sに計上します。
この変更により、損益計算書(P/L)上の費用計上の方法も変わります。従来は支払リース料を定額で費用処理していましたが、新基準では「使用権資産の減価償却費」と「リース負債に係る支払利息」をそれぞれ計上することになります。支払利息はリース負債の残高が大きいリース期間の初期に多く計上されるため、費用が前倒しで計上されるという特徴があります。
| 従来基準(ファイナンス・リース) | 従来基準(オペレーティング・リース) | 新リース会計基準 | |
|---|---|---|---|
| B/S計上 | リース資産・リース債務を計上(オンバランス) | 計上なし(オフバランス) | 使用権資産・リース負債を計上(原則オンバランス) |
| P/L計上(費用) | 減価償却費+支払利息 | 支払リース料 | 減価償却費+支払利息 |
貸手の会計処理
一方、リース会社など資産を貸し出す「貸手」側の会計処理については、借手のような大きな変更はなく、基本的に従来の会計処理が踏襲されます。貸手は引き続き、リース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれに応じた会計処理を行うことになります。これは、貸手側の損益認識パターンを大きく変更することによる実務上の影響が非常に大きいことを考慮した結果です。
簡便的な取り扱いが認められるケース
新リース会計基準では、すべてのリースをオンバランス化することが原則ですが、実務上の負担を考慮し、例外的に簡便的な取扱いが認められています。以下のいずれかに該当するリースは、重要性が乏しいと判断され、従来通り支払リース料を費用として計上するオフバランス処理を継続できます。
- 短期リース
リース期間が12ヶ月以内のリースを指します。ただし、購入オプションが付いているなど、実質的に12ヶ月を超えてリースする可能性が高い場合は対象外となります。 - 少額リース
リース資産の価額が少額であるリースを指します。先行するIFRS第16号では、新品であった場合の原資産の価額が5,000米ドル以下であることが一つの目安とされています。日本の基準における具体的な金額は今後の実務指針で示される予定ですが、個々のリース資産単位で少額かどうかを判断します。例えば、PC1台は少額リースに該当する可能性がありますが、PC50台をまとめて契約する場合は対象外となる可能性があります。
これらの簡便的な取扱いを適用するかどうかは、企業の会計方針として選択することになります。すべての短期リースや少額リースに簡便法を適用するのか、個別に判断するのか、事前に方針を決定しておくことが重要です。
会社に与える5つの影響 新リース会計基準で経営はどう変わるか
新リース会計基準の導入は、単なる会計ルールの変更にとどまりません。これまで費用処理で済んでいたオペレーティング・リースが資産・負債として計上される「オンバランス化」は、財務諸表の見た目を大きく変え、ひいては経営戦略そのものにも影響を及ぼす可能性があります。ここでは、新基準が会社に与える具体的な5つの影響を掘り下げ、経営にどのような変化がもたらされるのかを徹底解説します。
影響1 財務諸表へのインパクト
最も直接的かつ大きな影響が現れるのが財務諸表です。特に、これまで注記情報として開示するのみであったオペレーティング・リースが貸借対照表(B/S)に計上されることで、企業の財政状態の表示が大きく変わります。
貸借対照表 B/S の変化
新リース会計基準では、原則としてすべてのリース契約について、借手はリース期間にわたり資産を使用する権利を「使用権資産」として資産の部に、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債の部に計上します。これにより、資産と負債が両建てで増加し、貸借対照表の規模(総資産)が拡大します。特に、店舗やオフィス、大型の機械設備などをオペレーティング・リースで多数利用している小売業、飲食業、航空業、建設業などでは、総資産が大幅に膨らむ可能性があります。
損益計算書 P/L の変化
損益計算書(P/L)における費用の計上方法も変わります。従来、オペレーティング・リースでは支払リース料が定額で費用計上されていました。しかし新基準では、費用が「使用権資産の減価償却費」と「リース負債に係る支払利息」の2つに分解されます。
支払利息は、リース負債の残高に利率を乗じて計算されるため、返済が進むにつれて減少します。その結果、減価償却費と支払利息の合計額は、リース期間の初期に大きく、後半になるにつれて小さくなる「費用前倒し」の効果が生まれます。これにより、リース開始当初は従来よりも利益が圧迫される可能性があります。一方で、支払利息は営業外費用、減価償却費は販売費及び一般管理費(または製造原価)となるため、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は、これまで営業費用だった支払リース料が計算対象外となるため、増加する傾向にあります。
影響2 経営指標の悪化リスク
財務諸表の変動は、それを基に算出される経営指標に直接影響を与え、企業の財務健全性に対する外部からの評価を変化させる可能性があります。総資産と負債が増加することにより、特に注意すべき指標は以下の通りです。
| 経営指標 | 影響の概要 | 変化の方向性 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 総資産が増加する一方で自己資本は変わらないため、比率は低下します。 | 悪化 |
| 負債比率 (D/Eレシオ) | リース負債の計上により負債が増加するため、比率は上昇します。 | 悪化 |
| 総資産利益率 (ROA) | 利益が変わらずに総資産が増加するため、比率は低下します。 | 悪化 |
| 総資産回転率 | 売上高が変わらずに総資産が増加するため、回転率は低下します。 | 悪化 |
これらの経営指標の悪化は、企業の信用格付に影響を与えるだけでなく、金融機関との融資契約に盛り込まれている財務制限条項(コベナンツ)に抵触するリスクも生じさせます。例えば、「自己資本比率を一定以上に維持する」といった条項がある場合、新基準適用によって意図せず契約違反となってしまう可能性も考えられるため、金融機関との事前の協議が不可欠です。
影響3 経理業務の煩雑化
新リース会計基準への対応は、経理部門の実務負担を大幅に増加させます。これまで支払リース料を費用計上するだけで済んでいた処理が、格段に複雑になるためです。
具体的には、以下のような新たな業務が発生します。
- 契約の識別: そもそもその契約が新基準における「リース」に該当するかどうかの判定。
- 資産・負債の測定: リース料総額を現在価値に割り引くための割引率の算定、使用権資産とリース負債の当初計上額の計算。
- 期中の会計処理: 減価償却費と支払利息の計算と計上。
- 契約変更への対応: リース期間の変更やリース料の改定などがあった場合の、使用権資産とリース負債の再測定。
- 簡便法の適用判断: 短期リースや少額リースに該当するかを判断し、適切な会計処理を選択。
特にリース契約を多数保有している企業や、契約内容が多岐にわたる企業では、これらの情報を正確に管理し、計算するための業務フロー構築が急務となります。Excelなどでの手作業管理には限界があり、ヒューマンエラーのリスクも高まるため、業務プロセス全体の見直しが求められます。
影響4 予算策定と業績管理への影響
影響は経理部門にとどまらず、経営企画や事業部門の業務にも及びます。特に設備投資の意思決定や予算策定、業績評価のあり方が変わる可能性があります。
従来、オペレーティング・リースはオフバランスであるため、B/Sをスリムに保ちたい企業にとって魅力的な選択肢でした。しかし、新基準では購入した場合と同様にオンバランス化されるため、設備調達手段としてのリースの経済的な優位性が変化し、購入(Purchase)とリース(Lease)の比較衡量(Make or BuyならぬLease or Buy)の判断基準を見直す必要が出てきます。
また、予算策定においても、従来は支払リース料を計画に織り込むだけでよかったものが、今後は減価償却費と支払利息を見積もる必要があります。費用が前倒しで計上される特性を理解した上で、事業計画や利益計画を立てなければなりません。さらに、KPIとしてEBITDAを重視している企業では、新基準適用によってEBITDAが改善されるため、過去の数値との比較可能性が失われます。そのため、業績評価指標の見直しや目標値の再設定が必要になるでしょう。
影響5 監査対応と内部統制の重要性
会計処理の複雑化は、ガバナンス面にも新たな課題をもたらします。会計上の見積り要素が増えることで、監査法人とのコミュニケーションの重要性が増し、内部統制の強化が必須となります。
新基準では、リース期間の決定や割引率の算定など、経営者の判断や見積りが介在する場面が多くなります。これらの見積りの合理性について、監査法人から詳細な説明を求められることが予想されます。そのため、判断の根拠を明確に文書化し、いつでも説明できるように準備しておく必要があります。
さらに、すべてのリース契約を網羅的に把握し、正確な会計処理を継続的に行うための社内体制、すなわち内部統制の構築・強化が不可欠です。具体的には、各部署が締結したリース契約が経理部門に漏れなく報告される仕組みの構築、リース資産管理台帳の整備、会計処理手順の明確化などが求められます。適切な内部統制が整備されていない場合、会計処理の誤りや不正が発生するリスクが高まり、監査において重要な不備として指摘される可能性もあります。
今すぐ始めるべき新リース会計基準への4つの対策ステップ
2026年4月以降に開始する事業年度からの適用が予定されている新リース会計基準ですが、「まだ先の話」と考えていては手遅れになる可能性があります。対象となる契約の洗い出しから影響額の試算、業務フローの再構築まで、準備には想定以上の時間と工数を要するためです。ここでは、新リース会計基準の適用に向けて、今すぐ着手すべき具体的な対策を4つのステップに分けて解説します。
ステップ1 対象となるリース契約の網羅的な洗い出し
新リース会計基準への対応は、まず自社に存在するすべてのリース契約を正確に把握することから始まります。特に、これまで費用処理のみで済んでいたオペレーティング・リースが新たな会計処理の対象となるため、これらの契約を漏れなく特定することが極めて重要です。具体的には、以下のような契約が対象に含まれる可能性があります。
- コピー機、複合機、サーバーなどのOA機器
- 社用車やトラックなどの車両
- PC、スマートフォンなどのIT機器
- 工場の機械設備や建設機械
- 本社や支店、店舗などの不動産賃貸借契約
これらの契約情報は、経理部門だけでなく、総務、法務、IT、そして各事業部門など、社内の様々な部署で個別に管理されているケースが少なくありません。そのため、全社横断的なプロジェクトチームを組成し、各部署と連携しながら契約書を収集・リストアップする作業が必要不可欠です。その際、「リース」という名称の契約だけでなく、「賃貸借契約」「レンタル契約」といった名称の契約も対象となりうるため、契約の実態を精査する必要があります。洗い出した契約については、契約期間、リース料、更新オプションや解約オプションの有無といった、後の会計処理で必要となる情報を整理し、一覧化しておきましょう。
ステップ2 会計方針の決定と影響額の試算
対象となるリース契約の全体像が把握できたら、次に自社で適用する会計方針を決定し、財務諸表に与える影響額を試算します。このステップは、経営層の意思決定や金融機関への説明においても重要な意味を持ちます。
まず決定すべき会計方針の主な項目は以下の通りです。
- 簡便的な取扱いの適用判断: 新リース会計基準では、リース期間が12ヶ月以内の「短期リース」や、リース資産の価額が低い「少額リース」について、資産計上しない簡便的な処理が認められています。どの範囲までを簡便処理の対象とするか、具体的な基準(金額など)を決定します。
- リース期間の算定: 解約不能期間に加え、借手が延長オプションや購入オプションを行使することが合理的に確実である場合、その期間も含めてリース期間とします。この「合理的に確実」をどう判断するかの基準を定めます。
- 割引率の算定: リース負債の現在価値を計算するために使用する割引率を決定します。貸手の計算に用いられている利率が容易に算定できない場合、借手の追加借入利子率を使用しますが、この追加借入利子率をどのように算定するかの方法論を確立する必要があります。
これらの会計方針に基づき、洗い出したリース契約ごとに使用権資産とリース負債の金額を試算し、財務諸表全体へのインパクトをシミュレーションします。これにより、貸借対照表(B/S)の資産・負債がどの程度増加するのか、また損益計算書(P/L)において従来の支払リース料が減価償却費と支払利息にどう組み変わるのかを具体的に把握できます。この試算結果は、自己資本比率や負債比率といった経営指標への影響を分析し、事前対策を講じるための基礎情報となります。
ステップ3 業務フローの見直しと社内体制の構築
新しい会計基準を円滑に運用するためには、従来の業務フローを見直し、新たなプロセスを構築する必要があります。Excelでの手計算や場当たり的な対応では、業務が煩雑化し、ミスが発生するリスクが高まります。具体的には、以下の点について新たな業務フローを整備することが求められます。
- 新規契約時のフロー: 新たにリース契約を締結する際に、会計処理に必要な情報(リース料、リース期間、各種オプションなど)を契約担当部署が確実に取得し、経理部門へ連携する仕組みを構築します。
- 契約変更時のフロー: 契約期間の延長やリース料の改定など、契約内容に変更があった場合に、リース負債や使用権資産を再測定するプロセスを定めます。
- 決算時のフロー: 各リース契約に関する減価償却費や支払利息を正確に計算し、仕訳を起票する流れを標準化します。また、開示に必要となる注記情報の作成プロセスも整備します。
こうした業務フローを確実に実行するためには、社内体制の構築も欠かせません。経理部門の担当者だけでなく、リース契約に直接関わる各事業部門の担当者にも新基準の概要や業務フローの変更点について研修を行い、全社的な理解を促進することが重要です。誰が、いつ、何を行うのかという役割分担と責任の所在を明確にし、関連部署間のスムーズな連携体制を築くことが、新基準へのスムーズな移行の鍵となります。また、会計方針や業務フローについては、早い段階で監査法人と協議し、妥当性について合意を得ておくことも忘れてはなりません。
ステップ4 リース資産管理システムの導入検討
リース契約の件数が多い企業にとって、新リース会計基準への対応をExcelなど手作業で管理・運用していくことには限界があります。業務の効率化、正確性の担保、そして内部統制の強化という観点から、リース資産管理に特化した専門システムの導入が極めて有効な選択肢となります。
Excel管理の限界とリスク
初期の影響額試算にはExcelも有効ですが、継続的な運用においては多くの課題とリスクを抱えています。特に注意すべき点を以下にまとめます。
| 項目 | 具体的なリスク内容 |
|---|---|
| 属人化のリスク | 複雑な計算式やマクロが特定の担当者にしか理解できず、その担当者の異動や退職によって業務がブラックボックス化し、引き継ぎが困難になる。 |
| ヒューマンエラーの発生 | 手入力による数値の誤り、数式のコピーミス、参照範囲の間違いなど、人為的なミスが発生しやすく、データの正確性を担保できない。 |
| データの一元管理の困難さ | 各部署でファイルが乱立し、どのファイルが最新・正本であるか分からなくなる。データの不整合が発生し、月次・年次決算に支障をきたす。 |
| 複雑な計算への対応不可 | 契約内容の変更に伴うリース負債の再測定や、割引率の見直しといった複雑な計算を手作業で行うのは非常に困難であり、間違いの温床となる。 |
| 監査対応の非効率化 | 計算根拠や変更履歴を遡って証明することが難しく、監査法人からの指摘に対して膨大な説明コストと時間がかかる。 |
これらのリスクは、企業の決算業務の信頼性を損ない、内部統制上の不備として指摘される可能性もはらんでいます。そのため、特に管理対象となるリース契約が数十件を超える場合は、システム化を前提とした準備を進めることが賢明です。
プロシップなど専門システムの活用メリット
リース資産管理システムを導入することで、Excel管理が抱える課題の多くを解決できます。例えば、固定資産管理・リース資産管理の分野で高い実績を持つ株式会社プロシップのシステムなどを活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 業務の自動化と標準化: 使用権資産やリース負債の計上、減価償却費や支払利息の計算、契約変更時の再測定といった複雑な計算を自動化します。これにより、担当者のスキルに依存しない標準化された業務プロセスを構築でき、業務負荷を大幅に軽減します。
- データの一元管理と正確性の担保: 全社のリース契約情報を一つのデータベースで一元管理するため、常に最新かつ正確な情報にアクセスできます。手作業による入力ミスや二重管理を防ぎ、データの信頼性を向上させます。
- 内部統制の強化と監査対応の円滑化: 誰が・いつ・何を登録・変更したかという操作ログや、計算プロセスの履歴がシステム上に自動で記録されるため、監査証跡を容易に確保できます。これにより、監査法人への説明責任を果たしやすくなり、監査対応がスムーズになります。
- 迅速な経営判断への貢献: リース資産の状況や財務への影響額をリアルタイムで可視化できます。経営層が求める情報を迅速にレポーティングでき、的確な経営判断をサポートします。
システムの導入には、製品選定から要件定義、導入、テスト、そして運用開始まで一定の期間を要します。新リース会計基準の適用開始から逆算し、余裕を持ったスケジュールで導入検討を開始することが、プロジェクト成功の重要なポイントです。
まとめ
本記事で解説したように、新リース会計基準は、これまで費用処理が可能だったオペレーティング・リースを含む、原則すべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上(オンバランス化)することを求めるものです。これは国際会計基準IFRS第16号に準拠するための大きな変更点です。
この変更は、企業の自己資本比率といった経営指標の悪化や、リース契約ごとの複雑な計算による経理業務の負担増大など、経営に多岐にわたる影響を及ぼします。そのため、適用開始を待つのではなく、早期の対策着手が不可欠です。
まずは自社が対象となる全リース契約を洗い出し、会計方針を定めた上で影響額を試算することから始めましょう。契約数が多くExcelでの管理が困難な場合は、プロシップなどの専門的なリース資産管理システムの導入も有効な解決策となります。計画的な準備を進め、円滑な移行を実現してください。
